はじめに |
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97年7月16日午後7時15分。
その当時は新宿厚生年金会館近くにあったトーク居酒屋「ロフトプラスワン」に向かっていた一人の男が、入口の前で待ち伏せていた10人以上の男たちによってフクロ叩きにされるという事件が起こった。数時間後、イベント出演者としてロフト〜の演壇で語っていた彼は、「てめえ、まだそんなこと言ってんのか」という叫びとともに壇上に駆け上がった数人の男たちに再び暴行を受けた。
襲われたのは、ロフト〜において、しばしば自作のビラを撒いていた佐藤悟志。彼を襲ったのは、新左翼党派「ブント」(旧「戦旗・共産同」いわゆる戦旗荒派)のメンバーたちであり、統率していたのはその幹部であった。それは、佐藤氏が一週間前にロフト〜で「ブント」批判のビラを撒いたことへの報復だったのだ。
事態が単なるケンカではなく、数百人のメンバーを持つ党派による組織的計画的襲撃であり、第二の襲撃も示唆されていたことから、佐藤氏の友人やロフト〜の常連客数人によって「ロフトプラスワン襲撃を許さない共同声明」が呼びかけられ、最終的には66人と一匹の賛同者が名を連ねることになった。
この事件が多くの人々の憤りを呼び起こしたのは、単に十数人で一人に暴行を加えるという行為の卑劣さによってだけではない。言論への報復が暴力によって、しかもトークイベント中に出演者を襲うという形で行われたということ。加えてそれが、個人的激情といったものから発したのではなく、組織的計画的に実行されたものであったという事実。それこそが、人々の怒りを招いたのである。
「共同声明」の発表は、大きな反響を巻き起こした。「ブント」によるデマ宣伝や怪文書のバラまき。これに対する「共同声明」の反論。様々なメディアを舞台に行われた多くの人々の発言。このパンフレットには、その一部始終を最大限収めたつもりである。
このパンフの目的は二つある。
ひとつは開かれた討論空間の成立条件や党派的暴力についての思考と討論のために、一個の材料を提供すること。
もうひとつは今後も起こるに違いない同種の事件に遭遇する人々のために、ひとつの参考資料を残すこと。党派によるこの手の事件というものは、これまでいくども繰り返されてきたが、泣き寝入りせずに抗議して事実を公表したのは、おそらく前例がない。
強調しておくが、私たちは決して「ブント」という特定の組織を批判することを目的としているわけではない。言論を封殺する暴力行使や虚偽宣伝は決して彼らの専売特許ではないのだから。私たちは、この小さな事件から、より大きな教訓をひき出してもらうために、このパンフを残すものである。
太田リョウ ・ 鹿島拾市 ・ 玄田 生