鹿島拾市が友人・知人に「声明」への賛同を呼びかけた文章(97・8)


鹿島拾市からみなさんへ



 みなさんもよくご存じの佐藤悟志君(ベレー)が先日、「ブント」(旧戦旗荒派)の幹部らによって構成される部隊に襲撃されるという事件がおこりました。詳しい事実関係については同封の資料を読んで頂きたいと思います(「声明」→「私たちはなぜ…」→「佐藤自作ビラ」の順でどうぞ)。

 全治10日と診断されたといえば、軽く聞こえますが、眼球を含む全身の内出血と打ち身で体が腫れ上がり、二日間、仕事を休んで家で寝込んだそうです。
 また、後でわかったことですが、襲撃者たちははじめ、地下室の奥にある地下駐車場に潜んでいたのですが、ビルの管理人に発見され駐車場のドアにカギをかけられてしまったようです。もし、玄田君(山本君)が目撃して人を呼ぶことがなく、当初の企画通りに佐藤君を完全に人目にふれない地下駐車場まで引きずり込んでいたなら、ケガの程度は、確実にずっと酷かったことでしょう。

 「ブント」のメンバーは、周辺の人々に対し「議論の過程で自然発生的にケンカになっただけ」「佐藤はファシストだから殴ってもよい」などと説明しているようです。
 なるほど佐藤君は自ら「ファシスト」を名乗っています(正確には「反天皇制右翼つまりファシスト」)。いかなる“ファシスト”ぶりかは、みなさんもご存じの通りです。
 しかし佐藤君がビラを撒いたのは「ロフトプラスワン」で行われた「荒岱介−鈴木邦男対談」の会場においてでした。二人は、早大闘争時代の衝突について「和やかに語り合った」(「レコンキスタ」)とのことです。明白な天皇主義者たる鈴木氏とは談笑し、「反天皇制右翼つまりファシスト」である佐藤君はテロの対象になるとは、ずいぶんと身勝手な話です。
 そもそも自分たちで、すすんで「ロフト〜」に出演し、右翼の鈴木氏との対談を行ったはずです。そして種々雑多な人々が見学に来るこの場所で意に沿わぬ反応が出たから、テロに訴えるなどということが通用するでしょうか。(念のためいっておけば、佐藤君は鈴木氏の応援に行ったのではありません)。
 「ブント」の人々の言い分によれば、佐藤君は自称するとおりのファシストであり、これに対する襲撃は「対ファシスト戦闘」ということになります。
 たった一人で、度々妙ちくりんなビラを作り、ノコノコと党派の親分の晴舞台に現れ、彼らを批判するビラを撒く。そうした人物が、あの歴史上の虐殺者たちに連なるファシストであり、このビラの内容が気にくわないといって一週間後に集団で無言のテロをかけるのが、ムソリーニと闘った人民突撃隊やナチスに処刑された「白バラ」に連なる対ファシスト戦闘である−−こんな言い分を黙認すれば、私たちは、私たちの大切な言葉をドブに投げ捨てることになるでしょう。(そもそも対ファシスト戦闘ならなぜ「自然にケンカになった」などと虚偽によって取りつくろう必要があるのか。また愛国党とかのホンモノのファシストに対しても同様に“勇敢な”闘いぶりを見せてくれるのか。)

 この事件に対する、ぼくの見方は、「ブント」の人々とは違います。60年代から今日に至るまで、絶えることなく続く、党派による無党派大衆に対するテロ−−討論や説得によってではなく暴力で自らの政治を貫徹させようとするそれ−−という、恥ずかしい風習がまた繰り返されたのだ、と考えます。
 かつて、ぼくが身を置いていた大学は、中核派の拠点校でした。だから党派の支配というものを目のあたりにしてきました。金属バットの素振りのすぐわきで、数時間も強制される自己批判−−しかもその罪状は六月反安保行動(=“脱落派”)に参加することで、三里塚闘争に敵対したというもの。他大学で革マルや解放にテロられた知人は、一人や二人ではありません。反天連枠の集会によく来る竹内(中大)ブントにやられた友人もいます。全て、事実すら公にされず、ウワサだけが怪談話のようにささやかれ、やられた側が沈黙する。

 ぼくの知る限りでは、新左翼セクトが恣意的に党外大衆に暴力をふるったり支配したりということは、アメリカやヨーロッパでは、聞いたことがありません。かなり特殊日本的な風習だと思います。このようなセクトの組織的暴力(それによる政治の貫徹)に対して妙に寛容である、結局のところ犬に噛まれたと思って諦める風土をこれ以上再生産すべきではありません。こんなことを黙認し、諦観しながら、「権力を目指さないサパティスタは素晴らしい」などという話をしているなんて我慢できない。
 活動家や大衆に対しての、こうしたテロはもう許されないのだ、やれば逆に政治的に損をするのだ、ということを私たち自身が教えてやるべきです。

 最後に、佐藤君の毎度の“問題児”ぶりから、今度のことについても「知ったことか」といった反応をする方も多いと思います。確かに、今度のビラもかなりエグイものです。こんな風に相手を口汚くののしったり、茶化したりするのはダメだという批判も当然あるでしょう。
 しかし、そうした批判が、あの襲撃を免罪することにはなりません。
 そして、一人の“問題児”がトンチキなビラを撒いた事実と、それに対して「人間解放の前衛」を自認する数百人規模の組織がテロをかけた事実。どちらが、私たちが問題にすべき事実か、いうまでもないでしょう。また両者を天秤にかけ「どっちもどっちだ」などとすべきでもありません。
 もし、あのビラを撒いたのが、愛国党などのホンモノのファシスト組織だったなら、わざわざあとから襲いに行くようなことは、彼らはやらなかったでしょう。また逆に、例えば太田昌国氏のような「業界」でも一目おかれた知識人による批判であったなら、やはり暴力で応酬することはなかったでしょう。結局、佐藤君が「調子の外れた」「ファシストで」「孤立しているに違いない」から「安心して」テロったのだと思います。ぼくはこうした、人間に対する卑しい視線は、まさに権力的なものであって、許しがたいと思います。ここでホントに佐藤君を孤立させることによって、ヤツらの「卑しい視線」を「安心」させることになってはいけないと思う。

 以上です。出来るだけ多くの人の賛同を呼びかけたいと思います。「ロフト」のことなんか知らない、という人でも佐藤君襲撃に怒りを覚えるならば、そういう意味での連帯として、この声明に賛同して下さい。
 14日までに集約し、16日に対外的に発表するつもりです。形式は個人名で(  )の中は、所属団体とかアイデンティティー。

 例) 佐藤B作(俳優)
    橋本龍太郎(自民党)

 賛同して頂ける方は−−
 −−こちらに連絡ください(TELで結構です)

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